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泌尿器科コラム
頻尿の定義
泌尿器疾患で多い『頻尿』。では、人の1日の尿の量は基本的にどのくらいでしょうか?個人差はあるとしてもだいたい1.5リットルぐらいと思ってください。そして1回に出る量は200cc前後が正常です。そうなりますと普通1日に行くおしっこの回数は4~8回ぐらいが妥当なところです。それ以上頻回にトイレに行く場合は頻尿と言えるでしょう。
頻尿の主な原因
多尿 (水分のとりすぎ) |
泌尿器科の病気 (過活動膀胱、前立腺肥大症など) |
泌尿器のがん (膀胱がん、前立腺がんなど) |
糖尿病や高血圧などの全身性の病気 | 脳卒中や脊髄などの神経の病気 | 睡眠の病気 |
薬の副作用 | 不安や緊張など精神的なもの | 加齢を含む様々な機能の低 |
尿は腎臓でつくられ尿管を通って膀胱に溜められます。そこから尿道を通って体外に排泄されます。また尿を溜めたり出したりするしくみは脳からの神経の微妙なバランスの上に成り立っています。ですから腎臓や膀胱、神経など頻尿は様々なところが原因となり得るのです。
頻尿は、お薬で辛い症状を和らげることが出来る可能性があります。また、最近は女性の患者さまが大変増えていますが、泌尿器科では患者さまが恥ずかしい思いをするような検査はほとんどありません。恥ずかしいとか、歳のせいだと諦めずに、つらい思いをしている方はぜひ一度泌尿器科にご相談ください。
夜間頻尿
夜の頻尿(夜間頻尿)とは、夜中におしっこのために1回以上起きることです。1回はまだしも、2回以上だと生活の質(QOL)の低下に強く関与することとなります。
60歳以上の人は男性、女性に関わらず、約8割の方が何らかのおしっこに関する症状を有しているとされています。その中でも最も頻度の高い症状が夜の頻尿で、2人に1人が自覚していると言われています。
夜間頻尿の原因
泌尿器科の病気でいえば前立腺肥大症が重要となります。前立腺肥大症と夜間頻尿は密接に関連しており、頻尿を訴える高齢男性に最も多い原因といえます。
もう一つは過活動膀胱です。前立腺肥大症は男性に限った病気ですが、過活動膀胱は男女を問いません。「突然に起こる耐え難い尿意」を自覚されたことがある方は過活動膀胱の可能性があります。
他にも例えば糖尿病や腎臓病、脳の障害やホルモンの分泌低下、高血圧や心臓病等いろいろな病気が組み合わさっている可能性があります。また血がさらさらになると勘違いして水分を摂りすぎることも原因となります。
夜間頻尿の治療法
前立腺肥大症は薬による治療で症状を改善出来る可能性があります。薬で効果が不十分な場合には手術という選択肢もあります。
過活動膀胱も内服治療で改善が期待されます。
過活動膀胱という病気を皆さんご存知でしょうか?テレビCMなどで、耳にした事がある方も多いかもしれません。過活動膀胱は男性・女性ともに見られる病気で、40歳頃から増え始め、40歳以上の方の約8人に1人が過活動膀胱の症状があると言われています。
過活動膀胱の症状
- 突然がまんできない、尿意をもよおす(尿意切迫感)
- 急にトイレに行きたくなり、トイレまで我慢できずに漏らしてしまう(切迫性尿失禁)
- トイレが近い(頻尿)
- 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
過活動膀胱の原因
過活動膀胱は、検査をしても原因特定ができない、原因不明のケースが一番多くなっています。しかし、中には明確な原因となるものも存在し、下記のようなものが挙げられます。
神経系の原因 | 脳出血、脳梗塞、パーキンソン病、アルツハイマー型認知症など これらの脳疾患・脊髄疾患により、脳と膀胱をつなぐ神経系に異常をきたし、過活動膀胱となる場合がある。 |
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骨盤低筋・下部尿路の原因 | 女性:出産や加齢により膀胱・尿道・子宮などをささえる骨盤低筋が弱くなった場合。 男性:前立腺肥大症により、下部尿路閉塞が起こっている場合。 |
加齢による膀胱機能の低下 | 加齢による膀胱機能低下が原因となる場合も多く、過活動膀胱は加齢とともに患者数も増加傾向にある。 |
過活動膀胱の診断方法
過活動膀胱の診断には、まず問診を行いながら症状を確認します。そして、尿検査やエコー検査などで『他に原因となる病気が隠れていないか』『膀胱に残っている尿の量の確認(残尿測定)』を確認します。
また、より正確な診断と治療を行うために、患者さんには排尿日誌の記録をお願いしています。排尿日誌はトイレに行った時間と排尿量を記録し、そこから排尿障害の原因を探ります。また、頻尿の原因として、水分の取りすぎにより起こっている場合もあるため、日誌をつける際には一緒に水分補給の時間・量を記録しておくとより精度が上がります。
過活動膀胱の治療
過活動膀胱の治療は薬物療法をメインに、膀胱訓練・骨盤低筋訓練を行います。膀胱訓練と骨盤低筋体操は、ご自宅で簡単にできる治療法ですが、症状や疾患によっては適さないケースがあります。頻尿だからといって過活動膀胱とは限りませんので、『自分は過活動膀胱かもしれないから』と自己判断で行うのではなく、専門医の診断・指示を受けた上で行うようにしましょう。
薬物療法 | 薬物療法では、膀胱の過敏な収縮を抑える効果がある、抗コリン剤を使います。 |
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膀胱訓練 | 膀胱訓練はトイレに行きたくなっても、すぐには行かないで我慢する訓練です。少しずつトイレに行く間隔を延長し、最終的には2~3時間の排尿間隔が得られるように訓練します。 |
骨盤低筋体操 | 膣や肛門を締めたり緩めたりする訓練です。「5秒間ゆっくり締めて10秒間休む」「締める、緩めるを素早く繰り返す」。 これらの訓練を毎日30回から80回8週間は続けます。 |
過活動膀胱はQOL(生活の質)の低下を招く
過活動膀胱になると例えば、『トイレを使いづらい長時間の移動が心配になる』『トイレの順番待ちが起きるような、混雑する外出先に行き辛くなる』『気分が落ち込んだり、不安になる』といったようなネガティブな意識を持つ方が多いようです。そうなってしまうと、やりたい事ができない・行きたい所に行けなくなり、QOLの低下を招きます。
トイレのお悩みを抱え込む前に、泌尿器科にご相談ください。
前立腺は男性にだけある臓器です。前立腺の肥大や筋肉の緊張等で、尿道を圧迫し排尿障害を起こした状態を前立腺肥大症といいます。加齢に伴うホルモンバランスの変化が主な原因といわれており、55歳以上の男性の5人に1人が該当すると推測されています。下記にあるような頻尿をはじめとした様々な症状が現れますが、『年齢のせい』と諦めてしまう方が多いようです。前立腺肥大症は治療により、改善する可能性があります。お悩みの方は泌尿器科までご相談ください。
前立腺肥大症の主な症状
- トイレが近い(頻尿)
- 突然がまんできない、尿意をもよおす(尿意切迫感)
- 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
- 残尿感がする(残尿)
- 尿の勢いが弱い(尿勢低下)
- 排尿が途中で途切れることがある(尿線途絶)
- お腹に力を入れないと尿が出ない(腹圧排尿)
治療方法について
前立腺肥大症の治療は主に2つ『薬物療法』『手術療法』に分けられます。基本的には薬物療法が第一選択肢です。 薬物治療では数種類の薬剤があり、それぞれ作用機序が異なるため、その方の背景を考慮しつつ薬剤を選択します。薬物療法で効果がない方、また重症状の方には、手術による治療が推奨されます。レーザーで前立腺患部を焼却する方法や、尿道にステントを留置して尿道を広げる方法など、手術療法も選択肢が複数あります。
前立腺肥大症の予防・悪化させないためには?
前立腺肥大症を悪化させないためには、日常生活の中で注意すべき事があります。前立腺肥大症の方だけでなく、そうで無い方にも当てはまりますので、参考にしてみてください。
- アルコールを控える
- 下半身を冷やさないようにする
- 刺激の強い物を避ける
- 適度な水分補給を心がける
- ゆっくりと入浴して、全身の血行を良くする
- 長時間座ったままを避ける
- トイレの我慢しすぎは禁物
- 便秘にならないようにする
膀胱炎は女性に多い?
膀胱炎は男性・女性ともにみられる病気ですが、特に女性に多く見られます。
その理由は、男性と女性の体の構造の違いにあります。女性は男性に比べ尿道が短く、肛門や膣の位置が近いため細菌が入りやすい状態です。そのため、排便や生理などで細菌が入りこみ、膀胱炎がおきてしまうのです。
また、女性に多い便秘も影響することがあります。膀胱炎の原因の多くは大腸菌で、膀胱炎原因の約8割にものぼります。便秘になると大腸菌が増えるため、結果的に感染のリスクが高まります。
このようなことから、男性よりも女性の方が、膀胱炎にかかりやすく注意が必要です。
膀胱炎をしっかりと治さずにくり返していると、細菌が尿管を通り腎盂腎炎を引き起こしてしまうこともあります。
『膀胱炎かな?』と感じたら、軽視せずにしっかりと診察を受けて頂くことをお勧めします。
膀胱炎の症状:
尿が近くなる、排尿時に痛む、尿の色が濁る・血が混じる、下腹部痛 など
尿検査は健康診断などでも行う一般的な検査ですが、この時に『尿潜血陽性』と診断された経験がある方も多いと思います。『尿は別に赤くなかったけど、血尿なの?』と疑問に思った方もいらっしゃるでしょう。違いについて簡単にご説明いたします。
尿潜血陽性
一般的な健診時に行っている尿検査では、試験紙を使って尿中に含まれているいくつかの成分を調べています。この検査は、スクリーニング(ふるいわけ)検査であり、具体的な病気の確定診断ではなく、あくまで病気の可能性がないか調べる検査です。
尿潜血反応は、その検査の1項目として、赤血球に含まれているヘモグロビンが尿に混じっていないか調べる検査です。この時、ヘモグロビンが一定を超えた場合、“尿潜血陽性”として判定されます。
赤血球が過剰に排出されている場合は泌尿器系・腎臓系などの病気が疑われます。しかし、赤血球は健康な人でも尿中に排出されていて、過労などで一過性の症状として尿潜血陽性となる事もあります。この検査では、尿中に排出されている赤血球の正確な量はわからないため、的確な診断をするには、追加検査を受ける必要があります。
尿潜血陽性=血尿とは必ずしもなりませんが、病気の可能性の完全な否定はできません。医師の指示のもと、その後の精査・経過観察をしっかりと行い、病気が隠れていないか見極める必要があります。
顕微鏡的血尿
記の一般的な尿検査で尿潜血陽性となった場合、尿沈査(顕微鏡で尿中の沈殿物を確認)という検査が行われます。ここで赤血球が確認された場合、顕微鏡的血尿となります。見た目に異常は無いが、顕微鏡で見ると血尿である状態です。
尿沈査で異常が確認された場合、具体的にどこが悪いのかを探るため、細胞診・血液検査・超音波検査など精査を行います。
健診で尿潜血陽性と言われても、尿の見た目・痛みなどの自覚症状に異常が無いからと、放置をすると見逃してしまいます。(健診の項目設定によっては、尿検査と同時に尿沈査を行う場合もあります。)
肉眼的血尿
上記の検査をしないと気付かない、尿潜血陽性・顕微鏡的血尿とは反対に、尿が『薄いピンク・赤・赤茶色』など明らかに見た目に異常がある場合は『肉眼的血尿』と言います。尿中に含まれる血液(赤血球)の量が非常に多いと、目に見える症状として現れます。
見た目に驚くものの、意外に痛みを伴わない事も多く、また数日の経過で症状が治まってしまう事もあり、そのまま放置をしてしまう方もいらっしゃいます。しかし『血尿はすぐ治まったから大丈夫』は禁物です。病気が隠れている可能性がありますので、絶対に放置してはいけません。すぐに泌尿器科へ受診をしましょう。
血尿・尿潜血陽性から疑われる病気:
膀胱がん、前立腺がん、腎臓がん、尿路結石、糸球体腎炎 など